制作

次に、関東近郊のどんな名所をゲームに登場させるかをみんなで相談しました。

森山 「やっぱり人気の東京ディズニーランドは出したいよね!」

福森 「僕もディズニーランドは好きだから、賛成!」

五味 「ディズニーランドの象徴といえば、やっぱりシンデレラ城だよね!」

小林 「僕はシーのほうが好きだけど!」

福森 「シンデレラ城いいじゃん!」

そこで、シンデレラ城を写真に撮り、ゲームに登場させたいと考えました。

福森 「だけどあんなに人気で有名な建物なんだから、やっぱりこれも許可が必要なんじゃない?」

Point 3 東京ディズニーランドのシンデレラ城をゲームに使ってよいのか。(公開の美術の著作物等の利用 第四十六条)

森山 「公開され、誰もが自由に見たりすることが出来る著作物(彫刻や建物)を使用することは、著作物の複製の作成や販売目的の小物などを作るなど、特定の場合を除けば、利用は自由とされているようだね。でも今回はゲームを作りそれを販売するということなので著作物の製作者に許可を取ることが必要となるかもしれないね。写真に撮るという行為は基本的に自由だし、さっき言った理由から建物の写真を撮ること自体は、著作権の侵害にはならないよ。でも、文化財として指定されている場所や商業施設だと、建物そのものの写真や、その近辺で撮影した写真の公開を制限している場合があるね。その場合は、建物を管理しているところに許可を取る必要があるんだ」

そこでディズニーランドに連絡し確認してみることにしました。

福森 「東京ディズニーランドに確認をとったら、非商用目的の場合、Webなどに名前や写真を載せることは大丈夫だって。だけど、ゲームの場合はディズニーの本社に交渉する必要があるみたい。とても厳しい審査があって、基本使えませんって言われた」

なるほど、シンデレラ城をゲームに出すのは難しいようです。

では、今話題のスカイツリーはどうだろうということになり、調べることにしました。

Point 4 スカイツリーのような建設途中の建物の著作権はどうなっているのか。(公開の美術の著作物等の利用 第四十六条)

そこで、スカイツリーのサイトを調べ、東京スカイツリーライセンス事務局に聞いてみることにしました。建設途中でもきっと著作権はあると思ったからです。

東京スカイツリーライセンス事務局 「名称の場合は、商用でない限り、自由に使用できます。写真の場合は、弊社の許諾を取る必要があります」

小林 「じゃあ、その手続きを進めようよ。ほかになにがあるかな?」

より公共性の高い建物ということで、皇居はどうだろうと考えました。

Point 5 皇居のような公共施設の著作権はどうなっているのか。(公開の美術の著作物等の利用 第四十六条)

そこで、森山君は宮内庁に連絡し、確認をとることにしました。日頃接点がない宮内庁だけに、電話をかけるのは緊張したようです。

宮内庁 「外部から見える写真は使えますが、内部の写真は使用許可が必要です」

森山 「ありがとうございました。とりあえず、皇居の外見写真は大丈夫のようだ」

ようやくゲームに登場する名所がひとつ決まりました。

五味 「あと、今年来日したことで話題のパンダも東京の名物だよね。パンダ可愛いし、ゲームに登場させられないかな?」

そこで、動物の著作権に関して、上野動物園に確認してみることにしました。

Point 6 上野動物園のパンダの著作権は?(公開の美術の著作物等の利用 第四十六条)

上野動物園 「動物園の名前は自由に使えます。でも園内にいる動物の場合は、名前(本名)を使用したい場合は動物園の許可を取得する必要があります。園内の動物の写真を撮り、その写真を使用したい場合は、動物園に、まず撮影の許可をとる必要があります。もしくは動物協会のWebでお金を払って、写真を借りることもできます。その他Web上にある他人が許可を取って撮影された上野動物園の動物の写真は撮影者が著作権を持っているため、基本使えません。ちなみに上野動物園を登場させることは大丈夫ですよ」

森山 「つまり、『パンダ』っていう動物の名前(種類)は使ってもいいけど、動物園の動物の名前は、商標登録されている場合があるから使用する前に問い合わせをして確認する必要があるんだね。じゃ今回は、パンダじゃなく、上野動物園を名所として登場させよう。子供の頃からよく遊びにいってたし」

五味 「そうか……パンダかわいいのに……」

小林 「そういえば、このあいだ上野公園に行ったときに、上野公園の西郷隆盛像のあたりで阿波踊りを踊っている人達がいて面白かったんだけど、銅像とか、踊りや動きみたいなものの著作権ってどうなっているのかな?」

Point 7 西郷隆盛像など銅像の利用に関して。(公開の美術の著作物等の利用 第四十六条)

西郷隆盛像の使用については、上野恩賜公園の事務所に確認をとることにしました。

事務所 「ウィキペディアや上野公園のWebに掲載されている画像は自由に使えます。しかし、場合によっては撮影する際に、許諾を取る必要がある場合があります」

小林 「じゃあ今回は、公園のWebの写真を使わせてもらうことにしよう」

森山 「他の銅像はどうなっているのかな?」

五味 「渋谷のハチ公像とか?」

福森 「銅像の著作権は、制作者(彫刻家)にあるんだよね。それで調べてみたら、渋谷の『忠犬ハチ公』の銅像は、彫刻家の安藤士(たけし)さんが持ってるらしい。サイトやゲームの中に写真などを使用したい場合は、安藤さんが社長をつとめる有限会社 現代工房に許諾が必要だって」

小林 「あと上井草駅のガンダム像は? あれ著作権とかどうなってるの?」

福森 「上井草駅のガンダム像は『西武鉄道株式会社』と『サンライズ』と『杉並区』の共同著作物なんだって。Webやゲーム中の使用については、上記3社の許諾が必要なんだ。誰が著作権を持っているのかを調べて、きちんと許諾を取ることが大切だし、それができない場合は権利侵害となる場合もあるから、使っちゃダメだね」

Point 8 阿波踊りなど、動き( モーション) にも著作権はあるのか?(著作物の例示 第十条一項三号、氏名表示権 十九条、同一性保持権 二十条、複製権 二十一条、上映権 二十二条)

五味 「踊りについては、俺、以前調べたことがあるんだけど、著作権法では、著作物の例示に『舞踊又は無言劇の著作物』とあって(第十条一項三号)、踊りや劇についての『型』や『振り付け』が著作物として保護されているんだ。これらの著作物の創作者(著作者)には、氏名表示権や同一性保持権などの『著作者人格権』、複製権や上映権などの『著作権』が認められているらしい」

福森 「阿波おどり会館に問い合わせたところ、踊りの型は著作物で、モデルにする場合は許可を取る必要があるんだ。阿波踊りには色んな種類があるから、種類によって許可の取得先が変わるよ。でも、踊りそのものに著作権をつけると、踊る人がいなくなることがあるから、いまだに曖昧なところだね」

五味 「あと、関東近郊の名所といえば、日本の象徴、富士山も入れたいよね」

Point 9 自然物である富士山に著作権はあるのか?

森山 「静岡県富士市の市役所総務部広報広聴課に連絡とってみたんだけど、富士山は富士市のサイト内にある『ふじフォトライブラリー(富士写真集)』内の画像であれば、商業利用でなければ特に申請などはせずにダウンロードして利用できるらしい。自分で撮った写真や自分で描いた絵も私的利用の範囲内であれば著作権を気にする必要はないってさ」

小林 「たしか『一年生になったら』って歌に富士山が出てくるよね。あの歌好きだった。そうだ、ゲームの中にあの歌も出そうよ」

そこで、小林君は童謡にも著作権があるのでは?と考え、JASRAC(日本音楽著作権協会)に確認してみることにしました。

Point 10 童謡や歌を使用したいときの手続きは?

小林 「童謡の著作権については、まずJASRACに連絡して、JASRACに登録してあるのかを確認し、もし登録してあればJASRACの許諾を得なくてはならないんだ。JASRACの許諾をとるときには、料金がかかるらしいんだけどね……。『一年生になったら』もJASRACに登録しているから許諾を取らないといけないね。登録してないものは、作者の死後から50年たてば、著作権が切れて使えるよ」

福森 「ゲームをより楽しんでもらうために、BGMやSE(効果音)を入れよう!」

五味 「そうだね。でもそれも著作権があるかもしれないから調べてみるよ!」

五味君が足音などの効果音は大丈夫なのか、またBGMに古いクラシックなどの曲はどうだろうと思い、調べてみることにしました。

Point 11 クラシックの利用とSE の利用について(著作隣接権 第八十九条、放送権及び有線放送権 第九十二条)

五味 「まず始めに、クラシック音楽というのは、音楽をジャンル分けするときの基準であって、年代とは関係ないよ。現在でも、新しいクラシック音楽が作曲されているよ、著作権の保護期間は『著作者の生存期間及び、著作者の死後50年』となっているので楽曲自体の著作権はなくなっている場合が多いけど、演奏することなどで著作隣接権というものが発生するらしいんだ。それは演奏したその音楽自体が著作権になるので、誰かが演奏したものがCDに録音されたものを購入したうえで、それを勝手に使ってしまうと、著作権の侵害になってしまうんだ。音源のサイトによっては著作権フリーと書かれていない場合があるよ。その場合はJASRACなどの管理団体や著作者に許可を取る必要がある。また著作権フリーと書かれている場合は、許可なく使用することは可能だけど、二次配布や加工禁止などの制限がつくこともあるよ」

小林 「ということは、僕らで演奏してそれを録音すればいいんだね!」

福森 「そうだ! レインボーブリッジも登場させようよ。前に渡ったとき、海がキラキラしてきれいだった。でもレインボーブリッジの著作権はどうなってるのかな?」

森山 「東京都港湾局にレインボーブリッジの著作権について聞いてみたんだけどゲーム内で使用するときは許諾を取る必要があるみたいだね。サイトで使用する場合は、商用でない限り、自由に使えるらしいけど」

やる気のある森山君はすでに調べていたようです。

福森 「じゃあ、レインボーブリッジの代わりに、小林の友達に頼んでオリジナルの橋のイラストを描いてもらおう! でもやっぱり海はキラキラさせたいな」

Point 12 水面を光らせるプログラム(著作権の例示 第十条一項九号)

海の光の反射がとてもキレイだったのでこれをプログラムでゲームに表現できないかと、福森君は調べてみました。そして、プログラムを無料で公開しているサイトを見つけました。

福森 「今回は私的な使用ではないから、無料とはいっても、プログラムの著作権は大丈夫かな?」

森山 「プログラムにも著作権があるので許可を取らなければならないんだ。サイト内に使用する際の注意などが書いてある場合もあるのでその場合は注意に従って使用することはできるよ。しかし、意識して使おうと思わなくても結果同じプログラムになることもあるのでプログラムの著作物は他の著作物とは違いが判別しにくく難しいところだね」

ゲームも完成間近かです。

▲ このページのTOPへ