とうとうゲームが完成しました! みんなが力を合わせて頑張ったおかげです。そこで、コンテストに応募する前に、みんなでもう一度チェックをかける事にしました。
チェックをしていると、森山君がキャラクターの受け渡しにもらったフォルダーの中に一緒に入っていた子猫のイラストが使用されていることに気がつきました。
森山 「この子猫いいのかな? ちゃんと作者と話せているのかな?」
このままコンテストに応募すると何か問題があるかもしれないと思い、調べてみることにしました。
Point 13 使用許可の取っていないイラストの利用。
森山 「このまま応募して素材の製作者(著作者)が気づいた場合、訴えられてしまうこともあるよ。問題となった場合は応募も取り消されてしまうかもしれなかったんだ。いくら制作者が小林の仲の良い友達とはいえ、そういうところはきちんとしておかないとね」
小林 「今から僕、確認してくるよ」
さすが森山君です。よく気がつきましたね。どうやら小林君の友人も快諾してくれたようです。
最終作業として、ゲームの最後に、制作に関わってくれたスタッフの名前をクレジットで出したいと考えました。そこでクレジットを制作し確認のためスタッフ全員に見せたところ、当初は全員実名を使っていましたが、キャラクターのイラストを書いてくれたイラストレーターはペンネームで、写真を撮ってくれた友達は名前を出さないでほしいと言われました。
五味 「感謝の意味も込めて、協力してくれたみんなの名前を出したいと思ったんだけど……」
そこで、クレジットの表記について調べてみることにしました。
Point 14 スタッフロールの制作者の名前の表記については?(氏名表示権 第十九条)
小林 「著作者人格権のなかに氏名表示権というのがあるんだ。これは、自分の著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば、実名か変名かを決めることができる権利のことなんだ。つまりスタッフロールの名前を載せるかどうかは、各個人で決めることができるんだよ」
五味 「作品制作には著作権に関する問題が多くて、最後まで気が抜けないね」
最終的にコンテストに応募する際には、学校の先生に全体的な確認をお願いするなど、専門家の力も借りて、作品の詳細にわたって気を配る必要があるようです。
五味 「ところで、みんなでつくったこのゲームの著作権はどうなっているのかな」
僕たちの作ったゲーム「関東近郊名所巡り」の著作権についても調べてみました。
Point 15 みんなで作ったゲームの著作権はいったい誰が持ってるの?(共同著作物 第二条一項十二号)
小林 「このゲームの著作権は僕達4人の中でだれが持っているんだ?」
福森 「それはね。2人以上の人が共同で作ったもので、分けて個別で使用できないものを『共同著作物』と言うんだ。だからこのゲームを作った僕ら4人がこのゲームの著作者であり、ゲームの著作権は僕たち4人全員が持っていることになるんだよ」
五味 「でも作った環境によっては、著作者が国や会社などになる場合もあるらしいよ」
森山 「へー、どんなとき?」
五味 「主に4種類あって
- 1、企画・決定によりその指揮のもとで著作物を制作すること
- 2、法人の従業員が職務上制作すること
- 3、法人の名前で公表されること
- 4、従業員に制作を任せるときの契約や職務規定などでこの定めがないこと
この4種類のどれかに当てはまると、制作者個人は著作権は持てないらしいよ」
小林 「なるほど~。でも今回の僕らのゲームは心配ないね!」
森山 「だけど、著作権って永遠に持っていられるの?」
僕たちの作ったゲームの著作権はいつまで続くのか。疑問に思ったみんなは調べてみることにしました。
Point 16 著作権はいつまで続くの?(保護期間の原則 第五十一条、映画の著作物の保護期間 第五十四条)
森山 「ゲームソフト、特にロールプレイングゲームの場合は、プレイヤーの操作により表示画面の内容が異なることもあり映画の著作物であるとされるらしいんだ」
五味 「つまり著作権は公表してから70年間続くようだね」
森山 「うん。でもゲームのすべてが映画の著作権に当てはまるようではないらしい。ゲーム画面の大半が静止画で、連続的な動き持った映像をほとんど使っていないものは映画の類似物としては認められないんだ。だからそういうものは、一般的な著作物として死後50年経過するまで、著作権は存続するらしいね」
森山 「ちなみに、一般的な共同著作物の場合、最後の一人が死亡してから50年らしいよ(保護期間の原則、第五十一条二項)」
福森 「なるほど。じゃあ僕らが作ったゲームはキャラクターも動くし映画としての著作物なんだね」
森山 「そうだね。今回の僕らのゲームは、公表してから70年は僕らが著作権を持っていることになるね」
Point 17 海外の著作権
コンテストに応募するとなんと日本大会で優勝し、世界大会に僕たちのゲームが出場しました。
五味 「海外などの著作権は『著作権に国境はありません』って言葉がある通り、国同士でいろいろな著作権に関する条約があるんだ。有名なので『ベルヌ条約』『万国著作権条約』があるよ! 日本はどっちも加入しているよ」
小林 「僕達、仲良し4人組がつくったゲーム『関東近郊名所巡り』は、世界大会でどんな評価を受けるのか、楽しみです」
仲良し4人組みはこれからも仲良くゲームを作っていきます。
今回ゲーム制作の流れの中にある著作権について調べてみて、まだ知らなかったことに気付けたり、調べることで知っていたことをさらに深く勉強できて、すごくいい経験になりました。また、他の著作権についてももっと深く勉強してみたいと思えるようになりました。このWebサイトを見て、これからゲームを作っていく学生たちにもっと著作権について興味を持ってもらえたら幸いです。